2008/07/25

千百十工程

前回の記事の元ネタの文章("India still top choice for offshoring")に、「1000-100-10 project」という珍妙な名前の政策が言及されていたので、ちょっと調べてみた。「1000-100-10 project」というのは中国語では「千百十工程」って言うみたいだ。

千百十工程(千百十プロジェクト)とは、中国商務省外資局が2006年10月16日に発表したアウトソーシング強化政策。原文は以下のページで見られる。

商务部关于实施服务外包“千百十工程”的通知

活動目標と主な施策は以下のとおり。

1.「千百十工程」の活動目標
2.「千百十工程」人材育成計画の実施
3.アウトソーシング企業の強化育成のサポート
4.「アウトソーシング基地都市」建設の強力な推進
5.アウトソーシング情報の共用サービス基盤の創設
6.中西部地区のアウトソーシング産業発展の奨励及びサポート
7.アウトソーシングにおける知的財産権保護体系の整備
8.アウトソーシング産業発展のための効果的な投資促進活動の積極的推進
9.アウトソーシング業務の統計値集計の十全な実施

要するに国を挙げてアウトソーシング事業を強化していきますよ、ということらしい。知識集約型産業だし、資源も大して消費しないし、環境汚染もないし、大学生の就職難問題にも効果があるし、だから人材を育成し、「アウトソーシング基地都市」を中心にサポート体制を整え、投資を促進し、知財関連の法律も強化し、経済統計も取りますよ、と。

以下に活動目標だけ訳してみる。

原文:"十一五"期间,在全国建设10个具有一定国际竞争力的服务外包基地城市,推动100家世界著名跨国公司将其服务外包业务转移到中国,培育1000家取得国际资质的大中型服务外包企业,创造有利条件,全方位承接国际(离岸)服务外包业务,并不断提升服务价值,实现2010年服务外包出口额在2005年基础上翻两番。

日本語訳:「第11次5カ年計画」期間において、中国国内に一定程度の国際競争力を備えたアウトソーシング基地都市を10カ所建設し、著名なグローバル企業100社の自社アウトソーシング業務の中国への移管を推進し、グローバル水準のアウトソーシング企業を大手中堅あわせて1000社育成し、さらに優位性のある環境の整備、あらゆる分野でのグローバル(オフショア)アウトソーシング業務の請負、ならびに提供サービスの価値の不断の向上を通じて、2010年にはアウトソーシング輸出総額を2005年比で4倍にする。

本政策に基づいて2006年にまず上海、北京、大連など11の都市が「アウトソーシング基地都市」(中国服务外包基地城市)に指定され、その後さらに3都市が追加されて、現在は以下の14都市がアウトソーシング基地都市として認定されている。

 大连 西安 成都 上海 深圳 北京 
 杭州 天津 南京 武汉 济南 合肥 
 长沙 广州

  

2008/07/21

オフショア開発に最適な都市トップ10

調査会社のIDCが2007年からGDI(Asia/Pacific Global Delivery Index)という指標を発表していることを最近知った。30以上の評価基準で主要オフショアリング都市を総合的に評価してランクづけしているらしい。先日2008年度のランキングが発表された("India still top choice for offshoring")。上位10都市は以下のとおり。

1. バンガロール   (インド)
2. ニューデリー   (インド)
3. マニラ      (フィリピン)
4. 北京       (中国)
5. オークランド   (ニュージーランド)
6. 上海       (中国)
7. ムンバイ     (インド)
8. ブリズベン    (オーストラリア)
9. 大連       (中国)
10.クアラルンプール (マレーシア)

といわけで、予想されるとおりインドが1、2位を占めて最強という結果になっている。記事によると、インドは充実したインフラ、優れた人材、それにコストの面で魅力的だということだ。

ちなみに去年のランキングもIDCの別のページにあった。

1. バンガロール   (インド)
2. マニラ      (フィリピン)
3. ニューデリー   (インド)
4. ムンバイ     (インド)
5. 大連       (中国)
6. 上海       (中国)
7. 北京       (中国)
8. シドニー     (オーストラリア)
9. ブリズベン    (オーストラリア)
10.オークランド   (ニュージーランド)

これを見ると、ムンバイと大連が順位を落として、北京とオークランドが順位を上げていることがわかる。その他の都市は大きくは変わっていない。シドニーは2008年にトップ10から陥落した。

大連はスキルと能力、及びインフラの面で他の都市に劣ると判定されたらしい。街中は相変わらず建設ラッシュだし、新しい空港も開港したのにこの評価だから、競争は厳しい。低成長の日本から見ると、大連だって目もくらむようなスピードで発展しているように見えるが、北京もオリンピックを控えて新空港開港&地下鉄開通ラッシュなので、大して目立たないのだろう。スキルについては、確かに今はそれほどでもないかもしれないが、これも時間の問題でいずれは上がってくると思う。あと日本語人材が豊富なので、日本のオフショアリングが今後急拡大すれば大連のプレゼンスも上がるだろう。